ビットの海

ゆるふわソフトウェアエンジニアしゃぜのブログ

「稼働率」と「人材価値」に関する話

(とりとめのない散文です)

IT業界というところにいると、「稼働率」というキーワードが時々出てくる。

受託の会社にいるときは、SEを遊ばせておかないように案件アサインをする、という文脈だったり(それが組織のKPIになっていた)。

小さな事業会社(中小企業、ベンチャーなど)にいるときは、黙っていても(ただでさえ少ない)人件費として資本が流出するのに恐怖し、少しでもKGI/KPIに貢献することをやらせ「続け」ようという背景があったり。

資本に余裕のある比較的大きな会社や、経営者が「稼働率」というキーワードに思うところがあるような場合だと、このキーワードはあまり出て来なかったな、と今では思いかえされる。

(今の職場ではほぼ聞かない単語だ)

さて、これは小さな会社に居たときの話で、自分は開発リードのような仕事をしていた。その会社の経営者は、メンバーの稼働率(手持ち無沙汰で遊びが無いこと)にとても関心を払っていた。

どうしていたかと言うと、メンバーに遊びが生まれないように、案件のバックログを積み重ねていた。メンバーは日々忙しく仕事をしていた。

ところが、リリースされた案件のクオリティや、リードタイム、KPIに対する効果は、現場視点から見るとあまり芳しいものではなく。

これをうまく説明できなくて、個人的にはモヤモヤしていたのだけれど、以下の記事に出会い、部内のフリートークの場で紹介してみた。

brevis.exblog.jp

「工程があって、個々の稼働率を高めても、全体のスループットは出ないことがある。品質もあまりよくならないらしい。」そんな話をしたような記憶がある。

自分の説明も拙かったというのもあり、結局、周囲にあまり理解されたような気はしなかった。経営者は分かったような、分からなかったような顔をしていたのを覚えている。

(理論をうまく説明できるという話と、プラクティスとして実践できるというのには大きな隔たりがあって、IT業界でよく遭遇することなんだけどそれは別の機会に書きたい)

ときは少し流れて、2017年くらいから、日本のIT業界でフロー効率とリソース効率の話題が出始めた。

t-and-p.hatenablog.com

This is Leanで紹介されている概念で、トヨタ生産方式とかリーンに詳しい人なら自明だったのかも知れないけど、自分のような普通のIT業界の住人にとってはちょっとした「発見」だった。

今にして思えば、あのときの経営者はリソース効率の話をしていて、自分はフロー効率の話をしたかったんだな、という。

ただ、あの時代に戻っても、This is Learnの理屈であまり経営者に納得してもらえる気はしていなくて、根本には人材価値みたいなのが、資産として会計上見える化されていないのが問題だと思っている。

どういうことかというと、リソース効率性を追求した時に、リーンでは良いこととされる「遊び」が発生し、現場の人間は学習の機会などに当てられるわけだけど、多分経営者から見ると、この「遊び」に価値を感じにくいのだと思う。

そしてその根本には、定量化しにくい(会計上表現しにくい)「人材価値」という問題があると思っている。

brevis.exblog.jp

^ ここで語られている通り、本当は会計上「人件費を繰延資産として資産計上する」「人件費の一部は労働の対価ではなく、職務能力のビルドアップ投資と考えてもよい」と考えて貰えれば良いんだけど、世の中はきっとそうはならないので...。

ぼくらは現場で、見えにくい人材価値みたいなものを、手を変え品を変え発信し続けることが必要なんだろうなー、と思ったという話。