ビットの海

ゆるふわソフトウェアエンジニアしゃぜのブログ

「経営学のフィールドリサーチ」を読んだメモ

随分前に買ったけど、本棚でホコリを被っていて、本棚整理で出てきたので何気なく手にとってみたら面白かった本。

概要としては「企業とその組織の実例(ケース)を研究するための方法論についてやさしく解説することを目的とした」(エピローグより)ということだそう。

内容としては上記のとおり、ケース・メソッドとケース・スタディをあわせた、フィールドリサーチをどうやってやっていくか、という実践的な内容です。

別に自分は研究者ではないけれど、特にSEをやっていたときに、既存の(システム運用などの)業務を改善せよ、みたいなことを仕事として渡され、何もわからずやっていた時期がちょっとだけあります。

SEを辞めて事業会社でソフトウェアエンジニアをするようになってから、アウトプットとしてのドキュメントを求められるような仕事はしなくなったものの、事業会社の中で、何かを改善せよ、みたいな話はポツポツ出てくるものです。

そのときに、自分が当事者として経験した業務ではない場合(たとえば、運用たことのないシステムなど)、コンサル風な感じで、現状把握をして、こうしたらいいんじゃない?みたいな(ときにはその改善自体を実践)することはよくあります。

自分は、人文系のフィールドワーク等の学問を学んだことや、コンサルの会社に居たわけでもないので、概ね我流でなんとかそういう場面を切り抜けてきたのですが、ふと、このアプローチってどうなんだろうと我に帰ることがあります(昔は フィールドワークコンサルティング というのも参考にしたりしていました)。

というわけで、多分この本をポチったと思うんですが、フィールドワーク関連の面白さはさることながら、経営学という学問のおもしろさも感じることができました。

特に以下のような記述は、多分に刺激的ではないでしょうか?個人的にはまさに!と思ったりしました。

第3章 部分と全体ーケーススタディをどう使うのか、より

ほとんどの企業にとって、唯一の目的は、利潤の最大化なのです。在庫コストの最小化はそのための一手段にすぎません。それを分解して、在庫問題というように切った瞬間から、もう最適化の基準としては在庫コストの最小化でやるしかなくなるわけです。

ところが、在庫コストを最小化するために、提示されたソリューションを実践すると、営業部門、他の工場、サプライヤーなど、いろいろなところに迷惑をかける結果になるわけです。これはなぜかというと小さく問題を切り出すために、企業のある一つの断面しか見られなくなってしまうからです。ところが、変数は一つの断面に収まりませんから、それを動かすとモデルの外で必ず影響が出てしまいます。そうなると企業全体にとっての最適化にはならないのです。