ビットの海

ゆるふわソフトウェアエンジニアしゃぜのブログ

「最強のデータ分析組織 なぜ大阪ガスは成功したのか」を読んだメモ

全般的な感想

  • 非IT企業におけるデータ組織の成功事例としては多分稀有。
  • 筆者が研究所出身で、その思考にも納得感がある。
  • 予算のオーナーシップ制度は、筆者は肯定的だが、自分は功罪あると思っている。が、きっとこの事例の大阪ガスであればうまくワークしているのかもしれない。
  • 分析者(アナリスト)が「育つ」「自立する」ってやっぱりエンジニアと似たように大変だなーとは思う。
  • 後半にオージス総研から出向者が来ていていろいろやってもらっている、と書いていて、やっぱり少人数チームで繰り返しオペレーションみたいなの回すの無理だよねーと思ったりした。
  • 個人的にはやっぱり伝統的日本企業めんどくさい...という気持ち。

印象的だった部分

第1章 ビジネスアナリシスセンターの実像

私たちのチームは当時、"個人商店"の集まりのような状態でした(中略)これでは個人の存在意義は認められても、チームとしての存在意義は薄いままです。経営の視点に立ては、そんなチームの戦力を増強しようとは思わないでしょう。
(中略)
そこで私はメンバー間でチームのミッションやアクションについて共通認識を持つため、それらを書面にまとめました。単にまとめるだけでは読み捨てられてしまうので、メンバーの意見も聞き入れながら論文にまとめ、メンバー全員の連名で学会誌に投稿しました。
(中略)
タイトルは「企業においてデータからの情報形成力を強化するのに必要なミッションと推進体のあり方」です。
「万が一、大阪ガスが倒産しても、年収OO万円の仕事に就けるだけの人材に全メンバーを育てます」。他社から求められるほどの人材に育てることを自らの責任としたのです。

第3章 事業部門から信頼と予算を勝ち取る

  • 責任には結果責任と説明責任があり、両者はトレードオフ
  • 高度な分析手法を用いて予測精度を上げると意思決定の結果は良くなる一方で、意思決定の根拠を説明するのは難しくなる
  • 単純な分析手法を用いた予測をすれば、意思決定の根拠を説明することは簡単だが、予測精度は低いので意思決定の結果は芳しくない
  • 人は両方を鑑みて納得できれば予測結果を受け入れる。
    • メンテナンス担当者は的中率60%の結果責任を負えないが、80%であれば、説明責任を果たしにくくても結果責任を負える。
  • 担当者が覚悟できる水準とは絶対的なものではなく、現状と比べた相対的なもの。

第4章 分析組織は経営に必ず貢献できる

  • 相対的に見て貢献度が大きくなるのは「未開拓のエリア」と「大金が動くエリア」
  • 全方位外交で、特定事業に依存することを避ける(データ組織のポートフォリオ経営)

第5章 メンバーの幸福を勝ち取る

  • 成長を促してくれる仕事の必要条件とは「責任」と「成果」が明確であること
  • 仕事のアサインを「解く」だけでなく、「見つける->解く->使わせる」の一気通貫にする
  • 事業部門でできることは断る

第6章 十八年かけて築いた三つの無形資産

  • ミッション、カルチャー、レピュテーション
  • 社内向けレピュテーションは一朝一夕で築けないので他社に対する競争力の源泉となる
  • 縁の下の力持ちスタンス、メディアに露出するときも現場となるべく一緒に、手柄の独り占めにみえるようなことをしない